矯正治療の種類と特徴

矯正治療の種類と特徴

矯正治療の種類と特徴

大切なのは、根本的な治療

矯正治療の種類
歯ならびが悪いのは、歯のはえるスペースが足りないことが原因です。
足りないスペースを作るためには、

 

・ 歯を何本か抜く
・ 歯の並んでいるアーチを拡大する

 

の何れかが必要になります。
但し、歯ならびが悪くなる原因は 舌・唇の機能異常、噛む回数の不足、悪いくせですので、それを治すことも同じくらい重要な治療の一部です。
糖尿病や高血圧に対し、薬を飲んだだけでは病気が根本的に治らないのと全く同じことです。

歯ならびよりも、かみ合わせ

健康にとって重要なのは、歯ならびよりもかみ合わせです。
お子様の矯正治療は、通常医療費控除の対象となります。
ただ、厳密に言えば

 

・見た目(審美性)をよくする目的の矯正治療は医療費控除の対象外
・機能を改善する目的の矯正治療が医療費控除の対象

 

となります。(詳しくは、厚生労働省のホームページをご覧ください。)
このことからも、機能回復のための矯正治療、即ち奥歯を含めたかみ合わせが重要視されていることがご理解いただけると思います。

 

このページでは、当院で採用しているいないに関わらず、比較的多くの歯科医院が採用している治療について紹介します。
当院で採用している治療については、タイトルの頭に★を付けてあります。

★マイオブレイス(トレーナー)


ここ数年、取り扱う医院が急増しているのが、マウスピース型訓練装置 『マイオブレイス(トレーナー)』。
歯ならびが悪くなる最大の原因である唇・舌の異常な機能の問題を排除するとともに、お子様の一生にとって重要な唇・舌の筋肉をトレーニングすることにより、歯ならびを改善することを目的として考案・開発された既製マウスピース型装置です。
使用目的によって幾つかの種類がありますが、5年ほど前から種類・サイズが一挙に増え、様々な症状・年齢に対応しやすくなりました。
もともとは『トレーナー』と呼ばれ、初期の代表的な装置として有名なのが、『T4k』です。
もともと『トレーナー』という名称がつけられているとおり、正しい機能を回復させるための、いわばリハビリを行う装置です。
従って、正しく使用しないと十分な効果が得られません。
正しく使用するためには、その装置の必要性をお子様のみならず保護者の方にも十分理解していただき、治療に参画していただかなければなりません。
様々な種類を症状・あごの大きさや形・併用する装置の種類に応じ、適宜使い分ける必要があり、歯科医師にとって知識と経験が必要な装置です。
幼稚園〜小学校低学年で治療を開始するのが効果的です。

マイオブレイスの使用目的

下記の歯ならび・かみ合わせ異常の治療に使用します。
 ・ 歯ならび異常
 ・ 出っ歯
 ・ 過蓋咬合
 ・ 開咬
 ・ 受け口
過蓋咬合とは、下の前歯が上の歯の根元やその後方の歯ぐきと噛みそうになった状態(下の前歯が上の前歯に隠れてほとんど見えない状態)、開咬とは上下の前歯が噛まずに、上下的に隙間が空いている状態のことを言います。
過蓋咬合や開咬の早期治療法として最近注目を浴びているのが、マイオブレイスです。

マイオブレイスの特徴

従来の矯正は、歯ならびが悪くなった原因を考慮せず、歯だけを並べていました。
その結果、後戻りが必ず生じ、顎関節症という病気になったり、将来歯周病が急速に進行する原因となる場合があります。
マイオブレイスはその原因を治すことから始めるため、後戻りが少ないのが最大の特徴です。
オーストラリアの歯科医師が考案した方法で、徐々に進化してきており、世界的に取り扱う歯科医師が徐々に増えている方法です。マイオブレイスは、お子様の在宅時(2時間)と就寝時にのみ装着する装置です。
この装置は、ただ単にお口の中に入れただけでは、効果があまり期待できません。
充分なお口周りのトレーニング(筋機能訓練:MFT)を併用することにより、歯ならびを改善する事ができます。
在宅時(就寝時を含む)のみ使用するので、学校などで使用する必要はありません。
矯正専門医でも、この方法を手がける先生が増えているようです。
恐らく、治療後の再発を防ぐ目的で使用していると思われます。

マイオブレイスの利点


お口周囲の筋肉を鍛えながら歯を並べていくので、後戻りが少なく、その人本来の歯ならびを実現する事ができます。
前歯・奥歯ともよく噛んだ、バランスのよいかみ合わせを目指します。
マイオブレイス単独で使用する場合、歯に複雑な構造物(装置)が入らないので、虫歯になりにくい矯正治療法です。(ただし、他の方法と併用する場合はその限りではありません。)
歯ならび異常の原因を治すことにより、お子様をより健康に育成する事が可能になります。
原因に直接アプローチするので、他の方法より再発が少ないと言われています。
治療による痛みは殆どありません。

マイオブレイスの欠点

ひどい歯ならび・かみ合わせ異常には単独では効果不十分であったり、装置自体が使用できない場合もあります。
正しく使用しないと、十分な効果が得られません。
(歯科医院での指導を守れないお子様・保護者には不向きです。)
マイオブレイス単体で治療が完結する症例は限られ、他の方法を併用して治療する場合が多いのが特徴です。

マイオブレイスの補助として使用する装置

BWS


BWSとはBent Wire Systemの略称です。
歯の並びの前後的な長さが足りない場合に使用します。
奥歯に薄いバンドを巻いてそこにワイヤーを差し込んで使う装置です。
前歯を前方に押し広げる効果があります。

BWSの長所

作成が比較的容易な装置です。
痛みを感じることはほとんどありません。

BWSの欠点

基本的に前歯4本を前に押す以外には使えません。

バイオブロック


入れ歯型の装置で床矯正装置と似ていますが、考え方が異なるそうです。
バイオブロックにはステージ1〜ステージ4があり、中でもステージ1とステージ3が有名な装置です。
ただ、ステージ3は悪い位置にある舌を正しい位置に誘導するのによい装置ではありますが、下手すると痛みがひどくて患者さんがお口に入れてくれないので、よい装置ではあるものの、使用する歯科医師は今ではあまり多くありません。
当院で使用しているのはバイオブロックステージ1(BB1)で、この装置は上の歯ならびのアーチが小さい場合、遅れた成長を取り戻す目的で横・前方に歯ならびを広げる装置です。
この装置単独ではよいかみ合わせには出来ないので、他の装置と併用します。

3Dリンガル・急速拡大装置

これらの装置については、別途後述します。

★顎顔面矯正

顎顔面矯正とは、上あごを広げる固定式装置(急速拡大装置)を使用して、上あごを急速に左右に広げる方法です。
時に「フェイスマスク」を併用することにより、上あごの前方方向への成長も促します。
これにより、永久歯がきれいに並ぶために必要なスペースを確保します。
急速拡大装置は、上あごの真ん中当たりに拡大用のネジがついています。
それを保護者が1日1回回転させることにより、左右に広がります。
ネジの回転は、(当院では)通常2ヶ月弱で終了しますが、医院の指示をきちんと守った場合、概ね1年半で装置を外します。
本法は(特に海外で)数多くの論文が毎年のように発表されている、根拠に基づいた治療法です。
急速拡大装置はあくまで歯の並ぶスペースを確保するための装置です。
従って、装置を外したあとは、別の装置を使用して歯を並べます。
この装置は下あごには何もしないので、下あごの歯ならびがひどく悪い場合は、別の装置で歯が並ぶスペースを確保する必要があります。

顎顔面矯正の利点

抜歯の可能性を少なくできる

上あごを広げてスペースを確保するので、抜歯しなくても歯を並べるスペースが確保できます。

気道の通気性の改善

この装置で上あごを広げると、あごの上にある鼻腔も左右に広がります。その結果、軌道の入り口付近の通気性がよくなります。
上あごの成長が不十分な人はもともと鼻腔も狭いことが多く、呼吸にとってもよい影響があると考えられます。
鼻腔が狭いことにより口呼吸になっている場合は、口呼吸の改善にもつながります。

目立たない

装置は口の中にあるので、外出時も目立ちません。

顎顔面矯正の欠点

歯を並べる装置ではない

この方法単独では、歯ならびはよくなりません。あくまで歯の並ぶスペースを確保する方法です。
あごが広がったあとは、他の装置や噛む訓練などで歯が並ぶのを手助けする必要があります。

装着当初は違和感がある

床矯正装置など、歯の裏側に入れる装置はすべて、最初は違和感があります。
特に、神経質なお子さんの場合はその傾向があります。
ただ、どんなお子さんでも1週間もすれば慣れてケロッとしています。
お子さんの順応力は、大人とは比較にならないので、ご安心下さい。

一時的に顔貌が変わる

拡大が終わった頃、なんとなく顔の雰囲気が変わり、鼻の孔が広がった感じになります。
これは、鼻腔が広くなるに伴う一時的な現象です。
あくまで一時的で、やがて良い顔貌になっていきますので、ご安心下さい。

★3Dリンガル

主に6歳臼歯(第1大臼歯)に薄い金属のバンドを装着し、それに様々な形のワイヤーを装着することにより、歯の傾きや位置・捻れを修正する装置です。
主に歯ならびを拡大する方向に作用するので、奥歯が永久歯に生え替わる時期以降に使用を開始し、かつ永久歯を抜かずに治療する場合に必要な装置です。ただし、乳歯は早めに抜く場合があります。
治療開始が遅めの場合、歯ならびを安定させるために必要不可欠な装置、と当院では考えています。
多くの場合単独で治療が完結せず、後でブラケットやマイオブレイスにて仕上をすることが必要になります。

 

乳歯が抜けたり虫歯になったときに歯が移動するのを防ぐ装置

主に前歯の位置を修正する装置

主に奥歯の位置を修正する装置

3Dリンガルの利点

歯の軸を立てることが出来るので、歯に斜めの力がかかりにくくなり、再発が起こりにくくなります。
後方の歯(第2大臼歯)の修正にも適した装置です。
乳歯が抜けたりむし歯になったときに、後方の永久歯が前に移動するのを防ぐにもよい装置です。
歯の裏側に装着するので、外からほとんど見えません。
痛みを感じることは、一部を除いてほとんどありません。

3Dリンガルの欠点

この装置だけで綺麗な歯ならびにすることは難しく、後でブラケットなどで仕上をすることが前提になります。 あくまで他の方法の補助として使用します。

3Dリンガルの種類

3Dリンガルにはいくつかの種類があります。代表的なものは以下の3つです。

3Dリンガルアーチ

上下の歯に使用し、前歯を前に押したり、奥歯の角度やねじれの修正などに使用します。
乳歯が早く抜けたとき、永久歯が前に移動するのを防ぐ、“保隙装置” としての役目も果たします。

3Dクアッドヘリックス

上あごに装着し、奥歯を外側に広げたり、前歯を前方に押すために使用します。

3Dクアッドアクション

下あごに装着し、奥歯の傾きを修正したり、第2大臼歯の傾きを修正するために使用します。

★床矯正


床矯正(しょうきょうせい)とは、取り外し可能な入れ歯のような装置し、歯ならびを広げたり、歯を動かすことにより歯ならびを治療する方法です。
床とは、入れ歯の土台となる部分のことを表す専門用語です。
床矯正は、悪くなりそう、あるいは悪くなりかけの時に治療を開始し、より自然な歯ならびを作る事を目的としているのが、最大の特徴です。
床矯正は、早期(幼稚園年長〜小学校低学年)に開始した場合は、もともとそれほどひどくない歯ならびであれば、この方法単独でもそこそこの結果が得られる場合があります。

床矯正の利点

歯を抜かずに治療するのが、最大の特徴です。
取り外しできるので、装置の手入れ、歯磨きが容易です。
殆ど痛みがありません。(たまに歯ぐきが痛くなる場合がありますが、調整によりすぐ治ります。)
一般的に、治療費が安価です。
採用している医院が多く、学校に装置をはめていっても恥ずかしがらない子が多いようです。

床矯正の欠点

奥歯のかみ合わせが崩れるのが最大の欠点です。
取り外しできるので、お子様が装置を入れてくれなければ、治療ができません。
装置の取り扱いをお子様任せにすると、トラブルが発生しやすくなります。
装置を正しく扱わないと、治療に時間がかかったり、良い治療結果が得られません。
一部のかみ合わせ異常(受け口や過蓋咬合・開咬など)には対応できない、或いは十分な改善が期待できない場合があります。

【コラム】 床矯正と奥歯のかみ合わせ


床矯正を行っているお子様のお母様が、
「前歯が並んだのでこれ以上の治療は望まない」
と言われることがあります。
実際、その時点で治療を終了としている歯科医院も少なくありません。
その方が治療期間が短くなり、患者様(保護者)の支持を得やすいと思います。
しかし前歯が並んだ時点では、床矯正治療中のお子様の奥歯のかみ合わせは、多くの場合よくありません。
この状態で治療を中止するのは、かみ合わせの問題による症状に将来悩ませられる可能性があり、好ましくありません。(歯ならび異常の影響のページ参照)
以前他院で床矯正治療を受けられたお子様が、『唇がゆがんできた』と訴え来院されたことがあります。
お口の中を診察したら、犬歯の位置が好ましくないばかりでなく、 奥歯が殆ど噛んでいないかみ合わせとなっていました。
残念ながら永久歯が完全にはえそろい、非抜歯による修正は既に不可能でしたので、矯正専門医を紹介しました。

 

床矯正は、一見簡単そうなので手がける歯科医師が多いのですが、やがて「奥歯のかみ合わせが崩れてしまう」事に気づき、多くの歯科医師は床矯正治療を行うのをやめるか、別の方法と併用するようになります。

さくら総合歯科では現在、床矯正は別の方法と組み合わせることを前提として、矯正治療の補助として使用しています。

★プレオルソX

プレオルソXとは

プレオルソXは既製のマウスピース型装置で、さくら総合歯科では主に受け口(反対咬合)の治療に使用しています。
下の前歯が上の前歯より前に出ている状態を、俗に『受け口』と呼びます。
受け口は、早期に治さないと下あごの骨が著しく成長し、場合によっては入院手術をして治療しなければ治せなくなります。(「受け口の治療」参照)
受け口は原因にアプローチすることが必須で、近年プレオルソ(タイプV)が早期治療用としてよく使用されるようになりました。
特に乳歯の段階で受け口になったり、前の永久歯がはえはじめた頃に下の歯が上の歯の前にはえて来たときに使用すると、効果的です。
受け口の多くは、
 ・ 舌の位置異常
 ・ 上の唇の筋肉の緊張
 ・ 口をあいて口で呼吸すること
などが原因と言われています。
そこで、それらの原因を排除する装置(ムーシールド)が考案・開発されました。
その後、パナシールド、プレオルソが開発されました。(ムーシールド・パナシールドについては後述)
プレオルソはさらに改良され、現在のプレオルソXとなりました。

プレオルソXの種類

使用目的により形状が異なり、3つの種類(タイプT〜V)があります。
その各々に、硬さや大きさの違う種類が用意されています。
さくら総合歯科では主にタイプVを使用しています。タイプTはまれに使い、タイプUは使ったことがありません。

プレオルソX タイプT

上顎前突(出っ歯)・叢生(歯ならびが悪い)・過蓋咬合(かみ合わせが深い)の治療に使用します。

プレオルソX タイプU

開咬(奥歯は噛んでいるが前方の歯が咬んでいない状態)の治療に使用します。

プレオルソX タイプV

受け口(反対咬合)の治療に使用します。
効果のない場合もありますが、多くの場合数ヶ月〜1年程度の装着で受け口が治ります。
(治らない場合は他の方法に移行します。)
なお、受け口の中には遺伝性の強いものがあり、この治療には抜歯や外科手術が避けられないこともあります。

プレオルソと呼ばれるマウスピース型の装置で、反対咬合に使われるのは、そのうちのタイプVです。

プレオルソタイプVの利点

手軽に、しかも比較的短期間に受け口が治る場合があります。
柔らかい素材を使用しています。

プレオルソタイプV欠点

全ての受け口が治るとは限りません。
受け口以外は治療できません。

★マルチブラケット(歯に器具を接着し針金を通す方法)


皆様が『矯正治療』と聞いてまず思い出されるのが、歯の表面に金具をつけワイヤーを使用するこの方法なのではないでしょうか?
ブラケットブラケットと呼ばれる小さな四角の金具に特殊な針金を装着して、歯ならびやかみ合わせを治療する行う方法のことを言います。
以前は、矯正治療の大部分を占めていました。
この方法は、永久歯がはえ揃ってから、多くの場合2〜4本の永久歯を抜いてから治療を開始します。
つまり、わざわざ歯ならびが悪くなるまで待ってから、治療を開始することになるのです。
他の病気で、悪くなるまで待ってから治療することは、殆どありません。

なぜ歯を抜く必要があるの?

そもそも歯ならびが悪くなるのは、歯がきれいに並ぶために必要なスペース(あごの大きさ)がたりないからです。
つまり、あごの成長が不十分であることが、その理由です。
永久歯が生え揃った時点では、上のあごの成長はほぼ止まっており、歯を抜くしかスペースを確保できないのです。

 

当院では、永久歯がほぼ全てはえてしまったお子様や、歯のねじれが著しい場合など、一部のお子様に対してやむを得ず使用する場合があります。

マルチブラケットの利点


マルチブラケット歯の傾きや位置を高い自由度を持って移動できるので、より美しい「歯ならび」を実現しやすい方法です。
歯が生えそろってから、抜歯することによって短期間に歯を並べるスペースを確保するため、比較的短期間で歯が並びます。
歯を微妙に動かすことが可能なので、芸能人など、究極の美を追究する方にとって最良の方法です。
取り外しできないので、子どもが勝手に外して治療が進まなくなることがありません。
多くの歯ならび・かみ合わせ異常に対応が可能です。

マルチブラケットの欠点

歯を抜く必要がある

マルチブラケットは歯の外側に(唇・頬の側)に接着し、そこにワイヤーをかけます。
したがって、主に歯ならびを絞り込む(小さくする)方向に力がかかります。
そのため、歯の並ぶスペースを確保するためには、多くの場合歯を抜く必要があります。
抜歯して矯正治療を行うことのデメリットについては、「歯を抜くべきでない理由」のページをご覧下さい。

歯根(歯の根)が吸収する

多くの症例で、歯の根が吸収されてしまう、との報告があります。
歯の根が吸収されると根が短くなり、建築物で言えば基礎が弱くなるのと同じことなので、将来歯を早く失う原因になります。

ブラケットを外すとき歯の表面が傷つく

ブラケットは何らかの接着剤で歯の表面の「エナメル質」にくっつける必要があります。
従って、それを治療後に外す際、エナメル質表面に細かい傷がつきます。
ただ、ほとんどの場合、それが歯の寿命に影響することは実質的にはありません。

奥歯が内側に傾く

本来奥歯は真っ直ぐに立ち、上下とも歯の軸に対して平行な力がかかるように並びます。
ところが、歯を抜いて治療する場合、歯が並ぶアーチが小さくなり、そのために歯を内側へ傾けて並べることになります。
その結果、噛む力が歯の軸に対して斜めにかかります。
皆様は釘を金槌で打ったことが、一度はあるでしょう。
釘の方向に対し少しでも斜めの力を加えると、釘はすぐに傾き、やがて曲がってしまいます。
歯も同じで、斜めの力には弱いのです。
斜めの力がかかると歯がより傾き、歯の並ぶアーチが狭くなり、結果的に歯ならびが悪化(再発)します。

その他の欠点

針金を交換したあと数日は、強い痛みを伴う場合があります。
歯磨きがしにくく、虫歯ができやすくなります。
虫歯ができたときにその治療がしにくい、という欠点もあります。

舌側矯正について

歯の裏側にブラケットを装着する「舌側ブラケット」は治療難易度が高く、よい結果が得られない場合があります。

ムーシールド・パナシールド

反対咬合(前歯の前後の位置関係が3歯以上逆になった状態≒受け口)の治療に使用する、特殊な形の取り外し可能な装置です。
主に就寝時に使用します。
必ず反対咬合が治るとは限りませんが、幼少期に使用すれば数ヶ月で治る場合があります。
当院では以前多用していましたが、現在は殆ど使わなくなりました。
パナシールド・ムーシールドは、受け口(反対咬合)の早期治療に特化された装置です。

ムーシールドとは


ムーシールドは、舌を挙上して下あごを前に押し出す力を抑制し、上唇が上の前歯を中へ押し込むのを防止する目的で考案されたものです。
多くの場合、既製品で対応が可能です。
ムーシールドはアクリルで出来たマウスピースの様なもので、原則夜間にお口の中へ入れておくだけで、ある程度の受け口が治ります。硬めの材料でできています。

パナシールドとは


パナシールドは舌を挙上することで、舌と顎に付着するオトガイ舌筋を緊張させ、それにより下の顎を後退させる目的で使用する装置です。
パナシールドは、 開発者の意図が若干ムーシールドと異なりますが、形状が似た装置です。
(作用機序は実用新案登録されています)
材質はムーシールドに比べてやわらかく、装置装着時の違和感が少なくムーシールドに比べて安価なため、当院では主にこちらを採用していました。

アライナー・インビザライン


着脱可能な透明のマウスピース(アライナー)を用いて歯ならびを治療する方法です。
アライナーによる治療を行っているグループは複数ありますが、いずれにしても装置を数多く作成し、それを交換して使用しながら徐々に歯を動かしていくのが特徴です。
ブラケットと異なり透明なので、目立ちにくい特徴があります。
主に成人に使用します。
インビザラインはアライナーと同じような装置ですが、3次元シミュレーションソフトで歯科医師がコンピューターで治療計画をたて、治療開始前にすべてのアライナーを一挙に作成してしまう方法です。
正しく使用しないと途中で装置が合わなくなり、装置を大量に再作成する必要が生じる場合があります。
高額の治療費が必要になるため、当院では取り扱っておりません。

アライナー・インビザラインの利点

透明な装置なので、目立たないのが最大の特徴です。
ブラケット矯正より、多くの場合治療中の痛みが少なくてすみます。

アライナー・インビザラインの欠点

装置の個数が多くなり、費用が比較的高額になってしまうことがあります。
臼歯(奥歯)がかみ合わなくなることがあるので、注意が必要です。
装置の装着時間が短いと、よい結果が得られません。
この方法では対応できない歯ならび異常もあります。

★原因を自分で治す!

原因の除去・・・★きわめて重要★

最初に述べたとおり、歯ならび・かみ合わせ異常の原因に対するアプローチをしっかり行わないと、後戻り現象に悩まされます。

 

・ 三度の食事をしっかりと食べる
・ 食事内容の改善
・ 清涼飲料水を制限
・ 舌と唇の機能訓練
・ 悪いくせ(態癖)をやめる

 

などを歯科医院での治療と併行して行うことが必須です。
(どんな矯正法にも共通ですが、トレーナーによる治療は装置を正しく使用することにより、自動的に舌・唇の機能が改善出来ます。)