食事の問題

歯ならびと食事

 

・ 清涼飲料水の摂取(スポーツドリンクを含む)
・ よく噛まずに食べる
・ よく噛む必要のない食材ばかり食べる
・ 3度の食事の量が少ない
・ 前歯でかみ切らない
・ 食事の時の姿勢に問題がある

 

なども、歯ならび・かみ合わせに影響を及ぼします。

咀嚼(噛むこと)とあごの成長

日本人が1日に噛む回数は、昭和初期に比べて約半分に減ってしまったそうです。
これは日本の食材の軟化と共に、清涼飲料水の影響が大きいと言われています。
Youtubeで海外の方に日本食を食べる動画が多くアップされていますが、海外の方は必ず
「軟らかい!」
「口の中でとろける!」
「噛む必要がない、歯がいらない」
と感激しています。
つまり、海外の方はしっかり噛みごたえのあるものを普段食べている、ということが分かります。

かむことの重要性

{かむことの重要性}
江戸時代、徳川幕府の歴代将軍は、歯ならびが悪かったそうです。
当時はよくかまなければ食べられない物が多かったのですが、将軍になった人たちは、かむ必要性の少ない、当時としては特殊な食事を摂っていたことが原因だそうです。

 

食事三度の食事を15分間しっかりかんで行うと、食後30分から2時間くらい顔周辺の温度が上がり、活性化されます。
ということは、一日3度しっかりかんで食事をすれば、顎の発育のための刺激が6時間以上加わります。
残念ながら最近のお子様で、三度の食事にそれだけの時間かけている方は少ないようです。
このことが、歯ならび・かみ合わせの悪いお子様が増えた要因の一つと考えられています。

噛むことと脳の発達

なお、かむことが右脳の「前頭前野」という部分の発達に、強く関わっていることが分かっています。
右脳の前頭前野は、情緒や感情のコントロールを司っています。
近年よくかまずに食事をするようになったことが、感情をコントロールできない人が増えている原因の一つではないか、と考える人もいます。
あごの発育は、『かむ』という行為により刺激され、促進されます。
かむ回数が少なくなれば、逆にあごの発育は悪くなります。
現代人は、歯の大きさが僅かに大きくなってきているにも関わらず、 あごの発育が悪くなってきており、その結果歯ならびの悪いお子様はどんどん増えています。
最近の若いタレントさんと、ベテランの俳優さんの顔貌を比較すれば、 あごの発育が悪くなってきていることは、一目瞭然です。

清涼飲料水(ジュース・スポーツドリンク・乳酸菌飲料)の摂取

コンビニ・自動販売機の増加により、清涼飲料水が簡単に入手できるようになりました。
それにより、清涼飲料水を常飲するお子様が増加しています。
ところが、清涼飲料水には多量の砂糖・ブドウ糖が含まれています。 従って、飲んだあとには血糖値が上がります。
血糖値が上がることにより、肝心な三度の食事の量が大幅に減ってしまいます。
従って、いくら一口を少なくし、30回程度噛んだとしても、 一日に噛む回数は十分とは言えません。 その結果、顎の発育が悪くなってしまいます。

コラム 歯の大きさと顎の大きさ
歯の大きさ

上に述べたように、日本人は戦後 永久歯の大きさが少し大きくなってきていることが、日本大学松戸歯学部の金澤英作教授らが2005年に発表した研究などによって明らかにされています。
因みに、西欧諸国では歯の大きさが大きくなっている、という研究がある一方で、小さくなっている、という論文も散見され、日本ほど歯が大きくなっている、とは必ずしも言えないようです。

顎の大きさ

欧米では、顎の大きさが年々小さくなってきている、という論文があります。
一方、日本では顎の大きさにあまり変化がない、という論文と、ここ数十年、小さくなってきているという論文があり、見解が分かれています。
このことをふまえ、2006年に大学の矯正科が自院の患者さんで顎の大きさの変化を調べました。
その結果、顎の大きさにあまり変わりは無い、という結果が出たため、大学の先生方はこの考えを支持している場合が多いようです。
しかし、この研究は大学の矯正科に通院している患者さんを調べたものであり、そもそも矯正治療が必要な患者さん同士を比較していることが問題で、歯ならびの良い人を含めて無作為に研究したものでなければ、信頼性は乏しいと言わざるを得ません。
従って、多くの開業医は『顎の大きさが小さくなってきている』という考えを支持しています。

離乳食の与え方

一般的に、離乳食の与え方は“標準的な月齢”で説明されます。
しかし、成長は個人差が大きく、それは歯の生え方も例外ではありません。
奥歯のかみ合わせが確立する前は、それに応じた離乳食が必要です。
また、正しい飲み込みを習得するためには、舌の機能の発達が必要です。したがって、離乳食を進めるに際し、舌の機能も考慮に入れる必要があります。
つまり、お口の機能を考慮しない離乳食の与え方は、異常な飲み込み習慣の原因になってしまう可能性がある、と近年指摘されています。

前歯でかみ切らない

小さな食材は、前歯でかみ切る必要がありません。 小さな食材ばかり食べていると、奥歯だけで噛むようになってしまいます。 その結果、顎の前方への発育不足が起こります。

食事の姿勢が悪いと・・・

楽しく食事をする鈴鹿のお母さんと子ども
また、よく噛みさえすればよいのか、というと、 そうではありません。 食事の際の姿勢も重要です。
小さいお子様は、足のつかない状態で食事をしている 場合があります。
足から舌まで筋肉の表面にある『筋膜』でつながっています。
このことから、足が床にしっかりついた状態で飲み込み(舌を動かす)をしないと、正しい舌の機能が習得できません。
わかりやすく説明すると、足元が不安定な場所でボールを投げようとしても、腕が真っ直ぐ振れず、正確なコントロールができないのと同じことです。
また、足がつかないと姿勢が悪くなり、その結果舌を正しく動かすことができなくなります。